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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



 正座の体制で、名前を見上げる朋子の表情は余裕のない切羽詰まったようなものだった。
 正座を止めろと、止めようとする名前の言葉も聞かず、朋子は冷たいコンクリートにそっと両手をついた。

「本当に、私がこんな事を言うのちょっとおかしいって思うかもしれないけど……お願い名前、幸村を、許してあげてほしいの。お願いします」

 そう言った朋子は、ゆっくりと頭をさげ、コンクリートへと額を擦り付けた。
 
「ちょ、ちょっと朋子!なにしてるの!土下座なんてしないでよ…!」

 自分に向け土下座をしてきた親友に、名前は半ばパニックになりながら木製のベンチから立ち上がると彼女の顔を無理矢理上げさせた。
 額についてしまっている微かな砂埃のようなものを、手で払い落としてやれば、朋子の手が勢いよく名前の両肩を掴みぐっと顔を覗きこんできた。
 涙に濡れた瞳は大きく揺れているものの、真剣さが滲み出ていて、その瞳にとらえられた名前は身動きが取れなくなってしまった。

「お願い名前っ…!私からの一生のお願いだから!」
「わ、分かったから…一回落ち着こう、ね?」
「私っ…私は、幸村の幼馴染で、小さい頃からあいつの恋愛を見てきたから、分かるのっ…!こんなに、真剣に誰かを好きになってる幸村初めてなの!」
「……朋子、」
「幸村のやつ、距離置かれても…諦めないであんたばかり見てるのっ…!女々しいやつだな、って最初思ったけど、違うの、そうじゃないの…幸村、それだけ名前のこと、真剣に好きなんだよ…!じゃなきゃ、相手に気づかれないように嫌がらせを消すなんてこと、しないよ!」

 大きく見開かれた目からは、綺麗で大粒な涙がぼろぼろと次から次へと溢れ出ては衣服やコンクリートを濡らしていく。
 頭のついていかない名前に、必死に訴えかけるようにして叫ぶ朋子。声は掠れ、時々嗚咽のようなものが混じっている。
 そんな彼女の背中をさすれば、そっと腕を掴まれ朋子の綺麗な瞳が名前を射抜いた。

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