第3章 白色ドロップ
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初めて三人で昼食をとった日から一週間が経った。
あれから三人は毎日屋上で昼食を共にしている。
朋子は相変わらず美少女で、可愛らしい笑顔を振りまいていたが時にオジサン臭くて日に日に好きの気持ちが重なっていくのが分かった。
それは、幸村に対してもそうだった。
これまで異性の友人はいれど毎日昼食を共にするほど仲のいい人は居なかった。そのせいか、幸村精市という男性が自分の中でとても特別な人に感じられる。
母お手製のお弁当を咀嚼しながら、ちらりと二人へと視線をやる。
他愛もない話をしているだけなのに、二人はそれだけでとても絵になっている。まるで二人がひとつの絵画の住人のように感じて、思わず見惚れていると、二人の視線がこちらへと向いて、思わずぎくりと身を震わせてしまった。
「苗字、ぼーっとしてどうしたんだい?」
そう言えば、変わったことがある。
幸村が名前の事を苗字さんから苗字へと呼び方が変わったのだ。朋子曰く、距離が縮まった証拠なのだと彼女は自分の事のように喜んでいた。
確かに、以前よりも幸村との距離が縮まった気がするのは名前自身も感じていた。
朋子と接するように名前にも接してくるようになったせいだろう。
からかったり、小突かれたり、小言を言われたり。
朋子は鬱陶しいとボヤくが、朋子は満更でもなかった。ここまで親しくしてくれる男友達なんて過去に居なかった。軽く話したり、登下校を共にするくらいだったなぁ、なんて名前は過去を振り返りながらそっと口を開いた。
「ごめん。なんでもないよ」
そう言って誤魔化すように笑った名前に、幸村は小さく眉を寄せ額を小突いてきた。
「お前はすぐそうやって笑って誤魔化すね。悪い癖だよ」
「そうかな?いや、ていうか誤魔化したつもりはないよ。本当になんでもないし。ただぼーっとしてただけ」
「ならいいけれど…具合いが悪いとか、そう言うのだったらすぐに言うんだよ」
「はいはい」
「はいは1回」
ピシャリと言い放たれ名前は、はーい、と軽く手を上げ返事をすれば、幸村は軽く目を丸くしたあとすぐに苦笑を漏らした。