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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



 折角話しかけようとしたのに、と内心で舌打ちを漏らしつつも、担任が教室へと入ってきてしまった為仕方なく名前は前へと向き直った。
 教卓の前に立つや否や軽い挨拶を述べた担任は早々に出欠席を取り始めた。担任の呼びかけに返事をするクラスメイトたちの声を聞きながら、名前は頬杖をつき溜め息を漏らした。
 横目でちらりと宮野を見てみれば、未だ怒りが収まらないのか、握りしめた手が白くなるほど力を込めて握っている。表情は相変わらず不機嫌そのもので、彼女の視線の先には幸村の背中があった。
 それにつられるようにして、幸村の背中へと視線をやり、そこでふとある事に気がついた。

 ーーなに?幸村くんの机、落書きしてある?

 目を凝らし、よく見てみると、机の右下隅に太く黒いマジックで
なにか書かれているようだった。本来もっと色が乗っていたであろうそれは、消そうとしたのかなんなのか、ほんのり色が薄くなっている。
 近づけばなにが書いてあるか分かるのだろうが、生憎今はSHRの時間。見に行けるわけが無い。それならば、人がいなくなった時にでもこそっと見に行こう、と考えた名前は幸村から視線を外すと担任と目が合った。

「苗字名前」

 目と目を合わせてフルネームを呼んできた担任に、名前はゆっくりと瞬きをしながら、静かな声で返事をした。



 昼休みの時間になった。生憎幸村の机は見に行けていない。本人がいたり、朋子に声を掛けられたり、チョコちゃんに声を掛けられたりと何かとチャンスが巡ってこなかったのだ。
 それならばいっその事放課後にでも見てみよう、と考えた名前の元に、弁当片手に朋子がやってきた。相変わらず表情は曇っている。
 どうかしたのかと問うてみても、はぐらかされて終わってしまい胸に引っかかりが残るだけでなんの解決にもならなかった。
 そんなもやもやした気持ちを残したまま、昼食をとりに屋上へと向かうため椅子から腰をあげた時ーー不意に気配を感じた。
 誰かが傍らに来たのだと理解すると同時に、顔をそちらへと向ければ、幸村がそこに立っていた。相変わらず疲れたような笑みを浮かべている。

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