第7章 赤色ドロップ
まだ宮野がやったとは断定出来ないが、こちらが何も話していないと言うのに、あの思わせぶりな発言が出てきたと言うのとは全くの白ではない筈だ。加えてあの癇に障る笑い方だ。絶対になにか知っている。
しかし、自分の勘違いという事もある。
もう一度机の中を確認して、ロッカー、スクール鞄も確認。それでも無ければ家を探してみるしかない。そして、それでも無ければ諦めて新しいノートを買おう。
別に、あのノートが無ければ授業が分からないなんて事はないのだから。寧ろ、黒板に書かれたものをうつすだけの作業なので名前にとっては別にする必要もないのだが、それだと授業態度が良くないからと、真面目にノートを取っているだけだ。
しかし、あるものが急に無くなるのはやはりモヤモヤするもので、名前が眉を寄せると同時にSHRの鐘が鳴った。
幸村と宮野が戻ってきたのはそれから数分後だった。行く時は手ぶらだった筈なのに、教室へと戻ってきた幸村の手には何故かビニール袋が握られていた。中になにかが入っているのが見て取れた。
なんだろう、と首を捻った名前の視界に、顔を真っ赤にし目に涙を溜めている宮野が映りギョッと顔を破顔させた。散々泣いたあと、という顔をしている。
思わずしぱしぱと目を瞬かせれば、視線に気づいた宮野にぎろりと睨みつけられ慌てて視線を外した。流れるように今度は幸村へと視線をやれば、朋子が言っていたように怒りの表情が滲んでいる。
ーー本当に、なんなの?訳が分からない。
宮野のあの発言も、急に教室を出ていった二人も、真っ赤な顔して泣いている宮野も。
名前にはまるで分からなかった。
一人首を捻りながら、やっと入ってきた担任へと視線を戻した。
* * *
次の日。火曜日の朝。名前は自身の席につき、机に手を入れ、ふとした違和感に気がついた。
「あれ…?」
無かった筈のノートが、何故か机の中に入っていたのだ。
眉を寄せつつ、机に入っていたそのノートを取り出し見てみるも、違和感がいっそう強くなった。