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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



 宮野は綺麗に笑みを貼り付けると、そっと耳元に唇を寄せ、そっと、言葉を紡いだ。

「精市くんは、ただの綺麗な顔した、お人形さんなんだよ。中身はつまらない空っぽで、見た目だけいい。まさしくお人形さんじゃない」

 その言葉を聞いた瞬間、名前の中のなにか切れたような音がした。気づけば宮野の胸ぐらを両手でつかみ、自分の方へと引き寄せていた。

「ちょっ…苦しっ…」

 胸ぐらを掴んだその両手が、ぎりぎりと力任せに上げられ息苦しさから宮野は眉間にシワを寄せ名前を睨みつけたが、睨まれた本人はさして気にした素振りも見せず、そっと相手に顔を寄せた。
 額同士を重なり、吐息がかかるほどの至近距離で名前の真っ黒な瞳が宮野をとらえて離さない。
 言いようのない恐怖に、宮野は足を震わせ立っているのがやっとの状態だ。それでも名前は気にした素振りを微塵も見せず、そっと口を開いた。

「幸村くんから、貴方が謝ってきたって聞いたけど…その謝罪の言葉は嘘だったって事だね?私が貴方に言った言葉は、伝わらなかったんだね?」
「っ…だったら、なんだって言うのよ…!」
「…ううん、別に、どうもしない。ただ…」

 名前はそこで一度言葉を区切り、怯えているせいで揺れてしまっている宮野の瞳をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「貴方は、幸村くんの4人になれない。そう思っただけ」
「は、はぁ…?精市くんの、4人って…なによ」
「いや、間違えた。今の言葉はちょっと違うかも」

 戸惑い問うてくる相手の声など聞こえていないかのように、名前は独り言を呟くように言葉を紡ぎながら、そっと宮野の胸ぐらから手を離した。
 瞬間、震えていた足は役に立たず宮野はそのまま床に崩れてしまった。冷たい床に、ぺたんと座り込み、なにが起きたのか分からないといった表情をこぼす。
 そんな相手を見下ろしながら、名前は言葉を続ける。

「貴方は幸村くんの4人になれない、じゃなくて…私も、幸村くんの4人になれない…かな、正解は」

 ぽそりとそう呟いた名前の言葉の意味が分からず、宮野はただただ困惑するばかり。

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