• テキストサイズ

【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



 そんな名前の視線に、態度に、苛立たしげを上乗せした宮野はもう一度舌打ちを零してから、顔、と短く答えた。そして、更に言葉を続ける。

「他になにがあるの?あの人に。話はつまらないし小言多いし。あの人と付き合っていい事って綺麗な顔眺められるからじゃん?あんたもそうだから精市くんのこと好きだったんじゃないの?」
「…そんなわけ、ないじゃない」
「へぇ?じゃあ私と違うね。私は隣に精市くんが居てくれたら話さなくてもなんでも構わないけど、あんたは違うんだ?私は綺麗な顔の精市くんが自分の隣にいてくれるだけで周りに羨ましがられたりして気持ちいいってのが付き合ってる理由だけど…なに?あんたもしかして本気で幸村くんに惚れてたわけ?」
「……宮野さん、それ、本気で言ってるの?」

 地を這うような低い声が、名前の口から出ていた。
 その声に、宮野はびくりと体を震わせ足を一歩、後退させた。
 声は地を這うような低いものだったのに、名前の表情は動いていなかった。ただじっと、真っ黒な瞳に宮野を閉じ込め相手の次の言葉を待っている。
 それが余計に、不気味さを際立たせ宮野はぶるりと身震いしつつ、大きく口を開いた。

「な、なによ…本気に決まってるでしょ?他になにがあるの?あぁ、そう言えば、私があんたに精市くんの悪口言った時にもあんた怒ってたよね。幸村くんはブランド品でもなんでもない!ってさ…あははっ」
「…………」
「確かにそう、精市くんはブランド品でもなんでもない。だって、ブランド品て見た目も中身もいい物の事を言うんだよ。使い勝手もひつようとされるの。けど、精市くんは見た目はいいけど中身はダメ、てんでダメ」
「……煩い」

 ーー黙れ、黙れ、黙れ。

 くすくすと癇に障る笑い方に、名前は酷く苛立った。苛立ちで、涙が出そうな程に、目の前にいる宮野の口から吐き出される言葉全部が不快だった。
 だからこそ、煩いと言ったのに。宮野の口は止まらない。

「所詮、精市くんはブランド品にも届かない」
「煩い」
「ただの」
「黙って」

 吐きそうだ、と思った。
 その瞬間、宮野の気配が身近に感じ、自然と下がっていた顔を上げれば、すぐそこに宮野はいた。

/ 291ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp