第7章 赤色ドロップ
「……丸井さんと、柳生さんですわね。分かりましたですの。お父様に伝えておくんですの」
ただし、お二人が了承してからの話ですのよ。そう付け足した須野に名前の表情はぱぁっと晴れ渡り満面の笑みへと変わった。
「え?!いいの?!やったーー!!ありがとう真凛ちゃん!!」
「はうっ…!!」
喜びのあまり抱きついた名前に、須野は顔を真っ赤に染め上げた。
その後、丸井と柳生にきちんと話をして了承を得て、7月の頭に四人+須野の両親と共に別荘に行くことになった。
避暑地だと言うそこは自然が溢れていて、少し歩くととても綺麗は川があると言う。得意気に話す須野に、名前の胸は踊りっぱなしだった。
* * *
須野の別荘の話から一週間と少しが経った。
別荘へ行くのは早いことで来週だ。金、土、日と三連休なのだが、丸井と柳生は金曜、土曜の午前までは部活の為途中参加となる。それまでは須野と名前は適当に過ごし、二人が来たところで避暑地へと向かうことになっている。
ーー早く行きたいなぁ…楽しみ。
そんな事を考えニヤついていた金曜日の放課後。いつものように生徒会室へと向かう途中で、ふと弁当箱がない事に気がついた。
そう言えば食べ終わったあと、いつもはスクール鞄に入れるところを机の横に引っ掛けたまま過ごしていた気がする、と名前は昼休みの出来事を思い出し溜め息を吐いた。
「はー…戻らなきゃ」
めんどくさいなぁ、なんて思いつつもそのままにしておくわけにもいかないので、元来た道を戻り教室を目指す。
少し前までは16時を過ぎればオレンジ色の道が出来上がっていたのに、今では日が伸びてまだその道は出来ていない。開け放たれた窓から運動部の声やら音やらが流れ込んでくる。
その中には、勿論テニス部も入ってる。テニスの球を打つ音、テニス部員の掛け声。立ち止まって見てみたい衝動に駆られたが、名前は1度ゆっくりと瞬きをしてから深呼吸をし、そのまま歩を進める。
立ち止まれば、自分が誰を目で追ってしまうのか、分かっていたからこそ立ち止まらなかった。