第7章 赤色ドロップ
とんとん、ぱちん、ぱちん。
そんな音が生徒会室に響く。柳生と名前の間に会話はない。しかし、不思議と気まずさのようなものは感じなかった。
ただ黙ってプリントを束ねて、ホチキスで止めて、出来上がったものはダンボールに入れる。その作業を黙々とこなし、ちらりと時計を見れば30分が経過していた。
プリントの山はまだ半分以上ある。しかし、1時間ちょっとすれば、終わるかもしれない、と名前はポジティブに捉え、そっと口を開いた。
「ねぇ、柳生くん」
「はい、なんでしょう」
黙ることに疲れてしまって、柳生に声を掛けたのだが、律儀な柳生は作業の手を止めて名前の方へと視線を寄越してきた。
手動こしたままでいいよ、と言葉を零しながら名前自身、プリントを束ね始めればそれを見た柳生は、分かりました、と短く相槌をうち出来上がったばかりのそれをダンボールへと詰めた。
新しいプリントに手を伸ばし、束ねていく様をちらりと横目で見てから名前は再度口を開いた。
「昨日、本当にごめんね。あと、ありがとう」
「昨日…い、いえ、気になさらないで下さい」
名前の言葉にほんの少し思考を巡らせた様子を見せた柳生だったが、何故かほんのり頬を上気させ、視線はホチキスに注がれている。
ぱちん、ぱちん。そんな音がして、また1部出来上がり、それはダンボールに詰められた。
「ちゃんと内緒にしててくれてる?」
「雷の件ですか?ふふ…ええ、勿論です」
自身の口に人差し指をあて、深刻そうな表情を浮かべる名前に、柳生は柔らかい笑みを浮かべ同じように自身の口元に人差し指をあてた。
二人顔を見合わせ、へらりと笑う。
「良かった!中三にもなって雷怖いとかダサいもんね~」
苦笑を漏らしながらプリントに手を伸ばし、5枚1組の束を作り、とんとんとテーブルをす数度ノックし紙を揃えた。
ぱちん、ぱちん。ホチキスを止めて、ダンボールに詰める。そしてまた、プリントに手を伸ばす。単純な作業だが、単純故少し飽きてきてしまった感が否めない。
そんな時、ふと柳生の手が視界の端にちらりと映った。