第3章 白色ドロップ
ある者は幸村を愛しすぎるあまり監禁紛いな事をして。
ある者は幸村を人形かなにかだと思い込み可愛い服を着せ、人形のように可愛がり。
ある者は自分の思い通りにならないと幸村に傷をつけようとして。
そんな者たちを間近で見てきたせいか、朋子は幸村に擦り寄る女をよくは思わなかったし、近づけさせようとしなかった。幸村と付き合っていいのは、自分と幸村が認めたものだけだ、と心に決めているらしい。
だからと言って、何故自分と幸村がお似合いになるのか。
名前には皆目検討がつかなかった。
自分と幸村くんじゃつりあわないよ。そう呟いた名前の言葉を綺麗に無視した彼女は、疲れたからベンチに座ろうか、と言って五歩先にある木製のベンチを指さした。
マイペースというか、なんというか。名前は彼女の独特なペースに呆気に取られたものの…思わず笑い声をもらせば、楽しそうだね、と声が背中に投げられた。
反射的に視線をそちらへと向ければ、弁当を片手にさげた幸村精市が微笑みながらこちらへと視線を向けていた。
「おかえり、幸村くん」
「ただいま。待っててくれたのかい?先に食べてて良かったのに」
「いやいや、折角だから三人一緒に食べたいからね。そりゃ待ってるよ」
なんて。本当はただ朋子と話し込んでいただけなのに。
名前は誤魔化すように笑いながらベンチを指させば、いつの間にそこまで行ったのかーー朋子がベンチに腰掛け優雅にサンドイッチを咀嚼していた。
ありゃ…。なんて思わず間抜けな声を上げ、幸村と二人視線を絡ませれば、どちらともなく吹き出した。
「おーい二人とも~早く食べなきゃお昼休み終わるよ~。幸村は水やりもやるんでしょ~」
愛卯朋子という人間は、本当にマイペースで、とても面白い子だな…と名前はひっそりと心の中で思った。
他愛もない話をしながらお昼を食べ終え、花に水をやりだしだ幸村の隣に、名前は立っていた。
幸村の真似をするように背筋をぴんと張ることを意識しつつ、水を与えられ嬉しそうにそれを身に浴びる花を眺める。やはり、宝石みたいにキラキラと輝いていてとても綺麗だ。