第7章 赤色ドロップ
それぞれクッキーを手渡し終え、二人は同じように嬉しそうに満面の笑みをこぼした。
「やりぃ!なんだ俺のぶんもちゃんとあんじゃねーか。良かったぜ~。帰ってからじっくり食うぜ。さんきゅーな、名前」
「兎ですの!可愛いですの…!名前さん、ありがとうございます。大切にいただきますわ」
「へへ、どういたしまして!」
子供のようにはしゃぐ丸井と須野を見て、名前は満足そうに笑みを浮かべた。
それから四人は他愛もない話をしながら校舎を出て、帰路についた。雨が降っていた事なんて忘れるほど綺麗な星空に、四人ははしゃぎ、他愛もない話は尽きることはなかった。
その日の夜。不二周助から電話がきた。
ついこないだ電話したばかりなのに、久しぶりのように感じるのは、やはり以前まで毎日顔を合わせていたからであろう。
幼い頃からずっと一緒だった幼馴染の顔を思い浮かべながら、鳴り響くスマートフォンを手に取り、そっと通話ボタンを押し耳に押し当てた。
『もしもし。今平気かい?』
名前が先に声を発するよりも先に、不二のそんな声が聞こえてきた。
電話の向こうがわから、テレビの音が微かに聞こえてくる。
「うん、平気だよー。どうしたの?」
風呂からあがり、濡れた髪の毛を丁寧にタオルドライしながら名前はそう言葉を紡いだ。
ドアを閉め、そっとベットに腰掛けたところで一旦耳からスマートフォンを外し、スピーカーへと設定しそっと自分の膝上に置けば不二の優しい声がそこから聞こえてきた。
『なんとなく。名前の声が聞きたくなってね…ふふ』
「あれー?珍しいじゃん、周助がそんな事言うの。明日槍でも降るのかなー」
『どうかな?雷でも降るんじゃないかな』
「うっ…嫌なこと言わないでよ!ただでさえ今日嫌な目にあったんだから」
調理室で聞いた雷の怒号を思い出し、苦虫を噛み潰したような表情を零した。
それと同時に、ふと柳生に抱きついてしまったことや手を繋いだこと、下着を見られてしまったこと。いろんなことを思い出してしまい名前は一瞬で顔を真っ赤に染め上げると後ろからベットに倒れ込んだ。