第7章 赤色ドロップ
柳生の"見回り"という言葉に、丸井は器用に片眉をあげ、見回りぃ?、と首を傾げて見せた。
その疑問の呟きに答えたのは柳生ではなく、お決まりのポーズのように腕組みをしていた須野だった。
「最近校内で不純異性交遊を働く生徒が多いので、放課後は生徒会と風紀委員で見回りしてますの」
「校内で不純異性交遊…?き、キスとか?」
須野の言葉に、頬を赤く染めながら名前は声を潜めてそう問うた。こくりと喉が自然と鳴る。
名前の視線が自身に注がれ、その視線に須野はほんのり頬を赤く染めごにょごにょとなにか口を動かしている。が、なにを言っているのかよく聞き取れない。
思わず首を傾げ、ん?、と言いながら須野に一歩近づこうとした名前だったが、それを遮るように柳生が口を開いた。
「その先、ですかね」
さらりと言ってのけた柳生。名前、丸井、須野の視線が彼に向けられる。
一斉に自身へと向けられた視線に、気まずそうに柳生は視線を反らせた。
「え……その先、って…つまり…」
「まぁ……そういう事だろうな」
名前の呟きに、気まずそうに肯定した丸井はいつものようにフーセンガムを膨らませた。
ーー私ってばなに変なこと聞いてんの…!!
そう思った瞬間、顔に一気に熱が集まり出した。きっと顔は真っ赤だろう、と名前は自分でも分かった。
気まずさと羞恥から誰に視線をやっていいものか分からず、視線をさ迷わせていると、不意に柳生と目が合った。
ふっ…と。あの綺麗な笑みを浮かべた柳生。また勝手に名前の心臓は跳ね上がった。
「…そろそろ帰りましょうか。19時を過ぎてしまいました」
柳生のその言葉のあと、三人の視線が時計へと流れる。柳生の言った通り時刻は19時を少し過ぎていた。
「急いできましたが…もうそんな時間ですの…」
「しゃーねぇ…名前、とっとと帰ろうぜ」
「あ、うん…そうだね」
各々好きなことを喋り、帰り支度を始めたのだが…ふと名前の視線が平皿に残っている残り少ないクッキーへととまった。