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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



「…ありがとう。柳生くん、本当に優しいね」
「いえ、別に普通です。それより、苗字さん、手を」

 そう言って差し出された柳生の手はやはり綺麗だ。
 ありがとう、と礼を述べながら手を重ねる。お互い手がとても熱かった。そして、お互い顔に赤色を差していた。
 重ねた手に少しだけ力を込めて、そっと立ち上がれば名前の視線は自然と窓の外へと向いていた。鉛色だった世界は、いつの間にか暗闇へと変わっていた。雨もやんでいる。

「いつ止んだんだろう」

 ぽつりと呟いた名前の言葉に、柳生の視線が流れるように窓の外へと向かった。

「本当ですね。気づきませんでした」
「ね、さっきまで降ってたし、雷凄かったのに。けど良かった…やっと地獄から解放される…。ほんっとに迷惑かけてごめんね、柳生くん」
「いえ、気になさらないでください。人は誰しも苦手なものはありますから」
「…ってことは、柳生くんにも苦手なもの、あるの?」
「ふふ、さぁ…どうでしょう?」

 そう言ってふんわり笑った柳生に、思わず心臓が跳ねた。
 あまりにも綺麗な笑い方で、驚いたのか、見惚れたのか、自分でも分からなかった。
 
「苗字さん?」

 じっと自分を見つめてくる名前に、柳生はほんの少しだけ眉を寄せ名前を呼んだ。
 瞬間、はたと我に返った名前はしぱしぱと目を瞬かせ、苦笑いを零した。

「あっ…ご、ごめん。魅入っちゃってた」
「魅入った?なにをです?」
「柳生くんの笑顔。綺麗に笑うからじーっとね、見ちゃったの。ごめんね」
「なっ…」

 頬をかきながら苦笑をもらし、謝罪の言葉を述べる名前に、柳生は目を見開きみるみると頬に赤色をさしていく。
 普段の冷静な柳生を知っているものからしたら、レアな光景かもしれない。
 しかし、名前はそんな事なにも考えていないのか、繋いだままであった手に気づき慌てて手を離し、また謝罪の言葉を述べた。その言葉に、いえ…、と短く返した柳生。お互い赤い顔のまま向き合っている。旗から見たら今からどちらかが告白するように見えるだろう。
 ふと、そんな時。名前はクッキーの事を思い出した。

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