第7章 赤色ドロップ
それから30分ほどがたち、今の時刻は17時30分を少し過ぎた頃。
調理部の面々はあれから少し話したあと、窓の外を眺め雲行きがあやしいからと帰っていった。調理室に残るは、補習をしている丸井を待つ名前のみだ。
調理台の上には丸井用と須野用の可愛いラッピング袋に入ったクッキーが置かれている。兎と熊の可愛らしそのラッピング袋は、先端部分が二股に別れており、それを結ぶと耳のようになるのだ。
100円均一で見かけ、衝動的に買ってしまったものだが、自分が使うにしては可愛すぎただろうか?なんて考えつつ、未だ更に残っているクッキーへと視線を投げた。
四枚の平皿の上にそれぞれ4、5枚ずつ乗っているクッキー。丸井と須野のラッピング袋の中に全て詰めてしまおうとしたが、入らなかったものだ。
ラッピング袋自体はもうひとつあるので、入れてしまおうかとも思ったが一方で須野が来たらこれを食べてもらってラッピング袋に包んだ兎のものをお土産に、とも考えていた。
どちらがいいか、と悩みに悩んで…とりあえず須野が来てから考える事にした。
それから更に時間がすぎ、18時30分になった。
丸井のLINEに、終わったら連絡頂戴、と入れてはあるが既読がつかない所を見るとまだ補習の最中なのだろう。
補習の時間が16時からだとして、開始時刻から既に二時間半が経っている。補習というのはこんなにもみっちりやるものなのか、と一瞬思ったが、青学にいた時、補習常習犯の友人は一時間で終わると言っていたのを思い出した。
ということは、厳格な立海大附属中学校だからこそこれほどまでに補習が長いのかもしれない。
「んー…暇だなぁ」
思わずそんな言葉が口から滑り落ちた。
気づけば外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。鉛色の空から次々降ってくる雨をぼんやりと眺めていたら、ころごろと空から嫌な音が漏れ聞こえてきた。
雷だ。思わず身を固くする名前。雷が昔から苦手なのだ。幼少の頃、不二周助の家に遊びに行った時、突然の豪雨と雷に名前は不二にべったりと張り付いたまま泣き叫んでいた。