第7章 赤色ドロップ
調理室に入れば、既にそこには自分以外の調理部メンバーが揃っており器具や材料などの準備をしていた。
謝罪を述べながら慌てて駆け寄り、スクール鞄を椅子の上に置いた。スクール鞄の中にあった袋を取り出し、中に入れておいたお気に入りのエプロンを取り出し身につけて、腕まくりをしてーー準備万端だ。
ボールやら伸ばし棒やら小麦粉やら…。必要な材料が並び、それ等を目にして名前はわくわくと胸を踊ろせた。
「さっ、始めようか」
にこやかに笑った部長のその言葉により、全員の手が一斉に動き始めた。
調理終了後、見た人は思わず口をあんぐりと開け見入ってしまうのでは?という程のクッキーが出来上がった。
大きい平皿に乗った大量のクッキー達。それ等は全部で四つあり、プレーン味、チョコ味、抹茶味、ストロベリー味となっている。
四つの平皿の上に味ごとに乗せられた大量のクッキー。まだたんまりと残ってはいるが、これでも調理部全員で腹が苦しくなるほど食べたのだ。
それでもまだ大量に残ってしまっているクッキーに、どうしたものかと頭を悩ませていた調理部の面々を目の当たりにして、ふと名前は丸井の顔が思い浮かんだ。
「あの、これ…良かったら貰ってもいい?」
そう控え目にいった名前の言葉に、調理部の面々はギョッと驚いた表情を見せ一斉に彼女へと視線を注いだ。
「名前ちゃんまだ食べられるの?!…見かけによらず、食いしん坊?」
目をしぱしぱと瞬かせながらそう問うてきたのはチョコちゃんだ。
「ううん、私じゃなくて…甘いのよく食べる人がいるから」
「ふーん…あ、それってもしかして彼氏?」
「かっ…?!………うん、彼氏」
「きゃーー!!いいないいなぁ!そういう事なら勿論!全部持ってちゃいなよ!ね!いいよね皆?」
赤い顔をして頷いた名前に、興奮したようなチョコちゃんは椅子から立ち上がり台を叩きながら調理部の面々を見た。皆笑顔で頷いている。
その反応に少しだけ気恥ずかしさを感じながらも、名前は笑みを浮かべ調理部の面々にありがとうと礼を述べたのであった。