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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



 ーー鉄拳って事は、殴られるってことだよね?

 そう思った瞬間、丸井と同様に顔を真っ青に染め上げる名前。
 それにしても、真田、とは誰だろう?どんな人だろう?鉄拳、という言葉が出てくるということは、暴力的な人なのだろうか?いや、だとしたら問題になる筈…などと思考を巡らせていた名前に、ふと丸井の声が耳に滑り込んできた。

「悪い名前!俺補習行ってくる!何時になるかわかんねーから部活終わったら先帰って構わねぇ」
「ううん、待ってるよ。折角丸井くんと帰れるんだもん、平気平気。任せてー」

 柔らかく笑いながらそう言った名前に、丸井は少しだけ目を瞬かせたあと、至極嬉しそうに礼を述べるとオレンジ色の道を走っていった。
 廊下は走ってはいけませんの!と怒る須野だったが、すぐに見えなくなってしまった丸井の姿に溜め息を吐き、名前へと視線を寄越してきた。
 金色の綺麗な髪が、オレンジ色と混ざってなんとも綺麗で見惚れてしまいそうだ。

「長々とお時間をとらせてしまってごめんなさいですの。部活動頑張ってくださいませ」
「うん、ありがとう真凛ちゃん。あ、そうだ生徒会のお仕事一段落ついたら良かったら食べに来ない?チョコちゃんが今日は色んな味のクッキー作るって言ってたから」
「…!生憎、私忙しいんですの」
「…そっか、残念。ごめんね、忙しいのに誘っちゃって」

 肩を落としわかり易く落ち込む名前に、須野は腕組みをした体制のままだが、おろおろとした表情は隠せていない。

「で、ですが私が本気を出せばすぐ終わりますの。少し遅くなるかもしれませんが、待っててくださいますか?」

 おずおずと恥ずかしそうにそう言葉を紡いできた須野に、名前は間抜けな顔を晒したものの、すぐに満面の笑みを浮かべると大きく頷いた。頬はほんのり赤かった。
 朋子以外の、友達らしい友達が出来ていなかったから、須野という友達が出来て嬉しかったのだろう。

 ーー宮野さんの時も、こうやって接することが出来たなら良かったのにな。

 ひっそりと心の中で自分の心の狭さを悔やみつつ、名前は柳生と須野に手を振り調理室へと向かったのであった。

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