第7章 赤色ドロップ
そんな二人を、丸井は訳が分からぬままただじっと見つめることしか出来ない。
頭をかき、いつものようにフーセンガムをふくらませた丸井とほぼ同時に、名前が再度口を開いた。
「生徒会長、そう言えばお名前はなんて言うんですか?同じ学年ですよね?何クラスですか?」
「…須野真凛、ですの。クラスは…3-Iですの」
「須野真凛ちゃん…いい名前…!クラスがIって事はジャッカルくんと同じクラスなんですね?」
「え、えぇ…桑原さんとはクラスメイト、ですの」
満面の笑みを浮かべ、楽しげに話す名前に生徒会長ーー須野真凛はほんのり赤かった頬を真っ赤に染めあげ、視線を泳がせている。
しかし、そんな彼女の様子に気が付かないのか、名前は未だなにか楽しげに話しかけている。
「…お前、なに照れてんの?」
不意に投げられた丸井の言葉に、須野は図星をつかれたように目を見開いたあと、じろりと彼を睨みつけた。
「どっ…同性の子とこうして話すのは初めてで緊張してるだけですの!ほっといてくださいですの!」
「え…生徒会長、お友達とかは?」
「………飼育小屋にいるうさぎが1羽…お友達ですの」
寂しそうに、そして気まずそうに、そうぽつりと呟かれた須野の言葉に名前と丸井はすぐに彼女が"友達0人"である事を理解した。
ーーちょっと変わった子だけど、こんなに可愛くていい子なのに…なんでだろ?
やはり第一印象と、生徒会長と言う立場からかなかなか友達が出来ないのだろうか?
名前はそんな事を思いながらも、握ったままの手にそっと力を込めた。きゅ、と込められた力に、須野は驚いた表情を見せしぱしぱと目を瞬かせながら名前を見つめた。
「生徒会長……いや、真凛ちゃん、私とお友達になってください」
「えっ……ええええぇ?!な、なんですの貴方突然!そ、そそっそんな事言われても全然嬉しくないんですの!」
彼女は間抜けにも声を裏返しながらそう叫ぶと、掴まれていた手を勢いよく振り払いーー代わりに、勢いよく名前に抱きついた。
「初めてのお友達ですのぉ~…」
涙声の彼女のそんな言葉が、耳に滑り込んできた。