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【R18】ドロップス【幸村精市】

第6章 緑色ドロップ



 顎に手をあて、ぐるりと思考を巡らせてみたが特にこれといって思い浮かばなかった。強いて言うならば、丸井と同じように美味いもん、と言ったところだろう。
 そんな名前の自己紹介を最後に、他愛もない話を始めた四人。弁当を広げ食べながら話をしてはいるが昼休み終了時刻まであと10分を切っていた。

「んで、名前。さっきの返事は?」
「んぐっ…!」

 お互い自分の弁当に舌鼓をうちながら、ふいに丸井が先程の話をふってきた。
 すっかりそんな事など忘れていた名前は、うっかり好物の唐揚げを喉に詰まらせかけたが朋子に差し出されたお茶になんとか一命を取り留めた。
 空になったカップを朋子に返しながら、名前はちらりとジト目を丸井へと向ける。

「……本当に、言ってるの?」
「嘘であんな事言うわけねーだろい!なぁ、ジャッカル?」
「いや、なんでそこで俺に振るんだよ…。けど、まぁ、そうだな。ブン太は冗談でそういうことは言わないな」
「ほらな!ジャッカルもこう言ってる!」
「いや、 …ほらな、って言われても…」

 ジャッカル桑原と名乗った褐色肌の男子の背中をばしばしと数度叩き、得意気に笑って言ってきた丸井に名前は苦笑を漏らした。
 冗談で言っていたとしても、本気で言っていたとしても。
 今の名前にはすんなりと丸井の申し出を受ける事が出来なかった。幸村にあんなことを言っておいて、すぐに丸井と付き合おうとか…そういう事は、考えられなかった。

 第一に、まだ名前は幸村精市の事が大好きだ。

 食べ掛けの弁当箱の中身を見つめながら、名前は緩く顔を左右に振り拒絶の意思を伝えてみたが、それでも丸井はめげなかった。

「じゃあ、お試しでいいからさ。一度俺と付き合ってみてくれよ。な?はなから無理だって決めつけんじゃなくて、時にはそういうのも必要だと思うぜ」
「……そう、なのかな」

 幸村とはまた違う、綺麗な整った顔を寄せて、そう熱弁してくる丸井に名前の心はほんの少しだけ揺さぶられた。
 確かに、そうだと思った。
 丸井は真剣に言ってくれているのに、はなからそんなの駄目だと、そんなのは無理だと決めつけていたところが、名前にあった。

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