第6章 緑色ドロップ
自分は、今しがた幸村精市に"大好きでした"宣言をし"失恋"したばかりだ。幸村にとっては、一方的に名前に振られたかと思うかもしれないが、名前にとっては立派な失恋だ。
そんな、失恋したての名前が。
友人だと思っていた丸井からまさか彼氏になりたいと言われるとは思ってもみなかった。
だからこそ、戸惑ったし、なんと答えていいか分からなかった。名前は目を瞬かせ、赤い顔のままただじっと丸井を見つめる。ふと、そんな時。痺れを切らせたように朋子が大きく口を開いた。
「だー!もう焦れったいな!付き合ってみたらいいじゃない、名前!大丈夫、こいつならヘタレぽそうだからそう下手に傷つけないでしょ」
「お、俺はヘタレじゃねーよ!」
「やかましいな、加勢してやってんだから黙っててよ」
「お、おう…悪い」
ーーあ、そこ素直に謝って黙るんだ。
そんなことを思って。気がついたら、笑っていた。
先程まで泣いていたのに、少しだけ声をあげて笑う名前に、朋子と丸井の真ん丸な目が向いた。
そして、その名前の笑いにつられて褐色肌の少年もつられて笑い、気づけばその場にいた四人が声をあげて笑っていた。
お互いの顔をつきあわせ、四人仲良く笑いあったあと四人は今更ながら自己紹介をする事にした。
場所を中庭へと移動した四人。大きな木の下は木陰になっており春の日差しから逃れる事ができる。
そんな場所で、四人小さく輪になるとお互いの顔をぐるりと見渡した。まず、口を開いたのは丸井だった。
「俺は丸井ブン太。クラスは3-B。好きなもんは美味いもん、シクヨロ」
そう言ってお得意のウィンクを決めた丸井に、朋子は、ふーん、と薄い反応を見せたあと自身も自己紹介をするためゆっくりと口を開いた。
「私は愛卯朋子。クラスは名前と同じ3-C。好きなものは…いじりがいのある人ね」
「それものじゃねーだろい…」
「はい、次。そこの丸こめ。早く」
「おい俺かよ!…ジャッカル桑原、クラスは3-Iだ。好きもんはコーヒーと焼肉。宜しくな」
「えーと…苗字名前、朋子と同じクラスの3-C。好きなものは…ぱっと浮かばないな」