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【R18】ドロップス【幸村精市】

第6章 緑色ドロップ



 しっかりと掴まれた手に驚き、名前は反射的にそちらへと視線をやれば、視界に入り込んできたのは相変わらずフーセンガムを膨らませている丸井ブン太だった。

「…なんでまた泣いてんだよ」

 ぱん、と乾いた小さな破裂音をさせた丸井が、そう言葉を紡いだ。表情は固く、怒りと戸惑いが混じったようなものだった。

「お、おいブン太…知り合いか?急に手掴むから驚いてるだろ」

 慌てた様子で丸井を制そうとする褐色肌の男子の言葉など気にもせず、名前の目の前にいる赤色はまた口を開いた。

「誰が毎回お前をそう泣かせんだよ」
「……それは、」
「なんでお前はいつも泣くんだよ、弱虫か」
「っ……」
「ちょっと!あんたなんなのよ急に!女の子の手いきなり掴んでおいて失礼なやつね…!」

 丸井の言葉に真っ先に反応したのは朋子だった。
 眉間にシワをため、丸井を威嚇するように声を張り上げたが、相手には効果がなかった。
 まるで朋子のことなど見えていないかのように、丸井は言葉を紡ぐ。

「なぁ、お前が泣く度に俺は何回でも楽しませよう会開いてやるよ。けどな?出来れば俺はそんな会じゃなくて普通にお前とーー苗字と、遊びてぇんだよ。言ってること、分かるか?」

 そっと頭に置かれた丸井の手は酷く優しいもので、また涙が溢れてきそうだった。
 名前は丸井の問いに答える事が出来なかった。喉の奥に鋭く尖ったなにかが邪魔をして、声を出せなかったのだ。
 口から吐き出されるのは、意味もないただの嗚咽に似た言葉のなりそこないばかり。そんな彼女を見て、丸井は浅い息を吐き、軽く目を閉じたあと、泣きじゃくる彼女を再度視界へと入れた。

「お前の泣いてる顔、俺見たくねぇんだよ」

 とくん、と心臓が心地よく跳ね上がった。

「なのに、お前は会う度泣いてるし…。誰が…何が、お前をそうさせてんだよ」
「丸井く…」
「俺、お前の泣き顔もう見たくねぇよ。笑っててくれよ…頼むから。じゃねぇと俺…」
「ふーーーーん…?」
「おわっ?!」
「わっ!?」

 苦しげに話す丸井と、それを黙って聞いていた名前の間に突然朋子がにゅっと間にはいり姿をあらわした。

「なんなんだよお前は!」

 突然現れ、至近距離で顔を覗き込んでくる朋子に丸井は眉を寄せた。

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