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【R18】ドロップス【幸村精市】

第6章 緑色ドロップ



「朋子っ!落ち着いて!ほら、離してっ…!」

 両手で幸村の胸倉を掴み、睨みつける朋子に、名前は慌てて止めに入れば、すんなりと彼女は手を離した。だが、きつい睨みはまだ続いている。

「調理部のあの子に聞いたよ。あんた、名前が話があるって言ったのに宮野優先したらしいじゃん?しかも、後で聞くつったくせに授業始まるギリギリまでぺらぺらぺらぺら…。なんで優先順位が向こうが上なわけ?好きな人より友達の方が上なの?そんでなんでおんぶして保健室までいったの?見せつけたいの?嫉妬させたいの?頭おかしいんじゃない?」

 調理部のあの子、とはチョコちゃんの事だろう。
 おっとりしていてよく気がきく彼女は周囲の事をよく見ていてーーいや、見すぎていて、たまに見てほしくないところを見てしまっている時もある。
 しかし、彼女は彼女なりに相手のことが心配で見ているのだろう。だからこそ、名前の友人である朋子に話したのだろう。
 次から次へと送られる朋子の幸村への言葉のナイフは、確実に幸村へとダメージを与えていっているようで、戸惑いの表情を浮かべていた彼の瞳は悲しい色に染まっている。

「…幸村、あんたは言動が伴ってない。傍から見たら名前じゃなくて宮野の方を好きなんだと捉えちゃうよ」
「っ…そんなっ…」
「!イラつくなぁ!その顔やめろ!被害者みたいな面すんな!いい?幸村。今までのあんたの恋愛は、私から見たらあんたに非はないからあんたを助けたんだ。けど、今回は違う。今回は100パーセントお前が悪い」
「……愛卯、」
「今まで恋愛に関して、あんたは酷い目あってきた。だからこそ、あんたが本気で好きになった奴には全力で応援しようと思ってた。けど、それはあんたがきちんと相手を全身全霊で愛してる前提の話。……言いたいこと分かる?」

 また、朋子の手が幸村の胸倉を掴んでいた。
 それをまた止めようとして、出来なかった。気づいたら、泣いていて、情けなくも足が震えて座り込んでしまったからだ。
 押し黙る幸村に、朋子は自分の方に強く幸村を引き寄せ、

「今のあんたは、ただ名前の反応を見て楽しんでる糞野郎にしか見えないんだよ」

 低く唸るように、そう言った。

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