第6章 緑色ドロップ
まだ立海に来て、1ヶ月にも満たない。だが、名前と朋子は昔からの連れのように仲が良かった。
しかし、それは自分だけがそう思っているのか、名前は思っていた。だが、それはどうやら勘違いだったようだ。
啜り泣く名前に、真剣な声音で言葉を紡ぐ朋子は相手に言葉を味合わせているようだった。そんな彼女の言葉がじんわりと染み渡っていくのを、名前は感じた。
「……朋子、」
「うん」
ゆっくりと、口を開いた。
少しだけ震えている名前の声。朋子はそこから先、急かすことはしなかった。
「あのね、」
「うん」
「私ね、」
「うん」
「幸村くんのことが、」
「うん?」
「好き、なのっ…」
「…うん」
震える声で言ったその言葉に、朋子は優しい声音で相槌を打った。
そこ声に、名前は酷く安堵し、じわじわと溢れるように出ていた涙が、堰を切って溢れ出した。大粒の涙が、頬を伝って顎へと流れ、そしてスカートへ落ちシミを作っいく。
しかし、そんな様もボヤけた視界ではまともに見ることが出来ず、名前は何度も目元を擦りながらぽつりぽつりと話し始めた。
なぜ宮野と幸村は仲良くなったのか、から始まり、心配だからと宮野の元へと走っていって結局戻ってこなかった事まで。
誰にも言わず、積もっていた塵が山となっていたものを、少しずつ吐き出すようにして宮野へと話した。
「自分が、性格悪いって…すごい、思うっ…。けど、けどっ、やっぱり…どうしても、ムカついて、悲しくてっ…!宮野さんの所にいった幸村くんが、その時、だけ…ほんの少しだけ、嫌いになった…けど、そんな小さな事で、幸村くんを少しでも嫌いになる自分が嫌でっ………どうしたらいいか、分かんなくて」
泣きじゃくりながらもひとしきり話し終えた名前は、電話口の向こうから聞こえてくる鼻を啜る音に、朋子?、と小さく相手の名前を呼んだ。
ずずっ、と大きく鼻を啜る音が聞こえてくる。
「名前…悲しかったね」
「…うん」
「悔しかったね」
「…う、ん」
「腹たったね」
「…うん」
朋子の言葉に、ひとつひとつ相槌を打っていく。丁寧に、丁寧に。