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【R18】ドロップス【幸村精市】

第6章 緑色ドロップ




 あの後、眠りこけてしまった名前をずっと抱きしめたまま自身もつられて寝てしまい、終了5分前の電話で二人は飛び起きた。
 ヨダレを垂らし寝ぼけ眼を擦る名前に、丸井は涙を流して笑い、恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら怒ってはいたが内心自分も可笑しくて仕方なかった。
 部屋を出る前に手早くメイクをなおした名前に、普段もいいけど化粧してるとまた違っていいな、なんて笑いながら丸井は褒めてきた。
 その言葉になんと返していいか分からず、どーも…、なんて可愛くない返事をした名前は、ふとスマートフォンのことを思い出した。
 テーブルに置いておいたスマートフォンに手を伸ばし、電源を入れれば幸村からの着信が二件とLINEが一件入っていた。

 "電話切れたけど、大丈夫かい?"

 ただ、それだけ。着信は、最初の一件と合わせての二件。
 つまり、切れたあともう一度掛けたが出なかった為LINEをしてきた…という所だろう。
 シンプルなその一文を何回か読み返し、きゅ、と唇を緩く噛んだ。

 ーーあの子には、あんなに必死なのに、私にはこれだけなんだ…。

 そう、ぼんやりと名前は思った。
 通話の途中で叫び声のあと切れた宮野と、着信中ただ切れた自分とではそりゃ対応が違うのは分かる。分かる、が。今の名前にはそれをどうしても素直に理解したくはなかった。

 ーー幸村くんは、私よりあの子の方が好きなんだ。

 そう、どうしても思ってしまう。
 デート中、宮野はその場に居ないのに、まるで幸村の傍にいるような感覚があった。自分が目の前にいるのに、幸村は目の前にいる自分より宮野と一緒にいる…そんな感覚があった。
 話途中で、彼女からの電話がかかってきてそれに出た幸村。そして、彼女が心配だからとそのまま走り出した幸村。
 まるで、愛しいお姫様を助けにいく王子様のようだった。

 ーー幸村くんは、私のことをお姫様みたいに可愛いって言ったけど…それは、違うよ。

 ーー貴方のお姫様は、宮野さんだよ。

 名前はそう心の中で呟いたあと、返信もなにもせずそっとスマートフォンを鞄の中に詰め込んだ。

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