第1章 回想
一時、こまちまちこさんが超次元帝国清掃課にさらわれてしまった時は、とても心配した。でも、こまちまちこさんは異次元獣になって戻されて、そして元の姿に戻った。
もう、こまちまちこさんが、「悲しい気持ち」のために温泉に入ることはない。五郎さんの子孫から渡された、心からのお詫びの手紙を読んで、五郎さんを許したのだ。
私は隣のこまちまちこさんを見た。
「こまちまちこさん、生まれ変わりって、本当はないのかな」
「……さあ?」
優しく微笑んで、こまちまちこさんは湯の中の綺麗な素足をかすかに動かした。
「だって、こまちまちこさんは、五郎さんの生まれ変わりをずっと待っていたんでしょう? 生まれ変わりが本当はないのだとしたら悔しいじゃない」
私は唇を尖らせる。でも、こまちまちこさんはゆるゆるとかぶりを振った。
「私はいいの。五郎さんと過ごした時間は本当に楽しかったから。その思い出だけで、もう充分に心は温まります。ここの温泉のように」
「私は生まれ変わりを信じていたのに。私が生きているうちに、生まれ変わった五郎さんが、こまちまちこさんに会いに来て欲しいって、そして、喜ぶこまちまちこさんの顔が見たいって、ずっと願っていたのに」
諭すように、こまちまちこさんが私を見る。
「生まれ変わりが本当にあったとしても、その人はもう『五郎さん』ではなくて、『違う人』です。五郎さんの姿とはまるで違う。私と過ごした記憶だって持っていない。私に会っても、私と約束したことすら覚えていないかもしれない。そんな人に会って、私は本当に嬉しいかしら? 風音ちゃんはどう思う?」
私は言葉に詰まる。