第1章 出会い
大野拓朗の黒目がちな大きな瞳が丸くなった。
「え?」
「私の年齢では茶の間戦士にはなれませんが、てれび戦士の皆さんの戦いを、いつもニュースで拝見しています」
その瞬間、普段は『課長』として、責任のある立場で戦っているであろう青年の、年に似合った邪気のない笑顔がぱあっと広がった。
「ありがとう」
この人、こんな顔をして笑うんだ。
再び赤面してうつむいてしまう風音に、「あれ? 顔が赤いですが、大丈夫ですか?」とのぞきこまれてしまう。
「だ、大丈夫です」
ふいに額にぺたっと大きな手が当てられた。温かな手だった。
「熱は……」
「あ、あのっ、本当に大丈夫なんですっ! 私、顔が赤くなりやすい体質でっ……!」
耳まで真っ赤になって、ぶんぶんと首を横に振る風音に、「これは失礼をしました」と今度は謝られる。
「ここには参拝に来られたのですか?」
「はい。この神社に参ると、生まれ変わっても会いたい人に会えるそうなんです」
「へえ」
大野拓朗の瞳がキラキラする。
「参拝していこうかな」
「大野課長にも生まれ変わっても会いたい人がいらっしゃるんですか?」
タイムトリップできる未来人にもそんな人がいるのだろうかと面食らって尋ねる。ところが、大野拓朗は明るく首を横に振った。
「いや、こまちまちこが五郎さんを待っているような、私が待つ人は今のところいませんが、誰にでも『会いたい人』っているものじゃありませんか?」
「誰にでも……?」
では、このどこかで大切な人が待っているような懐かしさは、誰もが感じているものなのだろうかと、胸に思う。
その時、どこからともなく手厳しい女性の声が聞こえて来た。
『大野課長!? どこにいらっしゃるんですか!? トイレにしては長すぎますよ!』
「まずい! 虎南分析官にバレる!? ……では、仕事がありますので、もう戻ります」
「お仕事、頑張ってください」
別れ際、さりげなく握手した手は、やはり大きく温かかった。