第1章 出会い
境内を戻る途中、お揃いの制服にしては、デザインが戦闘服めいた服装の子ども達が通り過ぎて行った。どこかで見た制服だと首を傾げて気付いた。
ここ数年、世間を騒がしているてれび戦士だ。異次元獣という獣が現われるたびに、奇妙な現象が起こるのを、未来人と一緒に解決しているのだと、テレビで何度も見ている。壇蜜に約束通り、会いに来たのだろう。
「おい、お前達! 忘れ物だぞっ!」
大きな声で叫びながら、鳥居をくぐって、真っ直ぐにてれび戦士を追って走って来る青年がいて、風音と危うくぶつかりそうになった。転びかけた風音を青年は慌てて抱き留める。
「す、すまない!」
「い、いえ」
ひょろりとした外見の割に、たくましい腕にがっしりと抱き留められて、思わずぽうっとなってしまった。赤面してうつむいている風音をそうっと離すと、青年は再び頭を下げた。
「慌てていたので、本当にすまない。……おい!」
青年の再度の呼びかけに、てれび戦士が振り返り、素直に戻って来る。子ども達に色紙とサインペンを手渡しながら、青年はぷりぷり怒っている。
「壇蜜さんのサインをもらって来てくれと、あれほど頼んだのに、色紙とペンを忘れるな!」
「大野課長、ご自分でもらったらいいじゃないですか」
てれび戦士の一人に言い返されて、『大野課長』と呼ばれた青年は咳払いした。
「私は本来なら、この時代にいないはずの人間だ。……この時代の人間のサインを手に入れたと、麿長官や虎南分析官にバレると困る」
大野課長は「こっそりと、誰にもバレないように、もらってくるんだぞ。『大野拓朗さんへ』と書いてもらうのも忘れるな」とてれび戦士に言い含めている。
その真剣な様子に思わず風音が吹き出すと、てれび戦士達も顔を見合わせて笑った。
「笑うな!」
「はぁーい!」
大野拓朗の一喝に、元気良く返事をして、今度こそ壇蜜に会いにてれび戦士達が走って行く。
ほうっと息をつく大野拓朗に、風音はぺこりと頭を下げた。
「いつも地球のためにありがとうございます、大野課長」