第2章 再会
それから数ヶ月後、風音はいつも通り、神社に参拝していた。特に思い入れがあるわけではないが、この神社は自宅に近いせいか、親近感があって、つい気軽に参ってしまう。
「すみません。この神社に参ると、生まれ変わっても会いたい人に会えるって聞いたんですが……」
誰かが社務所に声をかけている。男性の声のようだが、ずいぶんロマンチストだなとクスッと笑った。
「ここは縁結びの神も祀ってはいますが、生まれ変わっても……という伝承はありませんねえ」
呆れたような困ったような口調で、年寄りの神主が相手をしている。
生まれ変わりを信じるなんて、どんな人物だろうと好奇心が沸いて、社務所を振り返ったら、背の高い青年がこちらを振り返るところだった。
「……あ! 大野拓朗さん!?」
思わず声を上げてしまってから、慌てて口を押さえる。家族で毎週見ているテレビドラマの俳優が、こんな近くに現われるなんて初めてで、つい口に出てしまった。
大野拓朗が真っ直ぐこちらへ向かって来る。
大声を上げたから、笑われるのかな? 恥ずかしい。
赤面してうつむいていたら、頭の上から優しい声で話しかけられた。
「……女性のほうがこういう話はご存知かな? あなたはご存知ありませんか? 『生まれ変わっても会いたい人に会える』伝承。……なんだか、この神社の名前を聞いた時に、そんな伝承を誰かから教えてもらった気がして、気になって仕方なくて、来てしまったんですよ」
「いえ、この神社には、昔から毎日のように参拝していますけれど、そんな伝承は……。……でも、誰にでも『会いたい人』っているものじゃありませんか?」
思い切って顔を上げると、黒目がちな大きな瞳が驚いたように瞬いた。その瞬間に抱いた違和感は共通のものだと二人とも感じていた。
「あの……この神社に以前もいらっしゃいませんでしたか?」
「いや、初めてです。初めてなのに……おかしいな。あなたこそ、以前にお会いしたことはありませんか?」
「いえ、テレビでは良くお見かけしていますけれど、直接、お会いするのは、今日が初めてです」