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ドルフィンを待つ夜【インディゴの夜】

第2章 異変



 一時間ほど眠ったら、目が覚めた。見慣れない事務室の奥のベッドで寝ていることに気付いて、風音は仰天した。
「目が覚めた?」
 仕事をしていたのだろうか、事務室の机に座って、パソコンをしていた晶が振り向く。
「……晶さん!? ここ、晶さんのベッドですか?」
「そう。じきに目が覚めるはずって、テツが言っていたからね。酔い潰れて眠りこむなんて、風音ちゃんらしくないって心配してたよ」
 晶は立ち上がって、風音の目の前に立った。
「テツさ、自分から歩美ちゃんにフラれに行ったみたいなんだ。自分は歩美ちゃんを……ううん、誰かを好きになるにはふさわしくないって考えているみたい。だから、風音ちゃんは今のまま、そのままのテツを好きでいてあげて。誰かを好きになることに臆病なテツをそのまま見守ってあげて。お願いね」
 晶がベッドを貸してくれたのは、どうやらこの言葉を伝えたかったためらしいと風音は判断した。
「はい。そうします」
 素直にうなずいた。それから、ベッドを貸してもらったお礼を言って、立ち上がりながらも、疑問を感じて尋ねる。
「でも、どうして私なんですか? テツくんの指名客は他にもいるのに」
「テツが失恋して、真っ先に電話したのが風音ちゃんだったから」
 テツがどんな気持ちで、風音に電話をかけてきたのかは分からない。でも、晶がそう言うのなら、これからもテツのことを見守ろうと風音は思った。
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