ロリコン王子(絶倫)をドMに覚醒させようとする悪役令嬢の話
第1章 早々王子に逃げられない1
普通ならばすぐさま待っているであろうレオンハルト王子のもとへ会いに行かなけばならなかったが、まだ体調が優れないと駄々をこね、ここに王子を呼んで頂戴!とわがままを口にする。本来口が裂けても言えないであろう無茶苦茶な私の命に、当然メイド長アンナは固まった「行きましょうお嬢様。」「絶対に嫌よ、疲れているの、なんなら帰って貰って。」その攻防が何度も続く。アンナは顔を手で覆い、どうしたものかと困り果てていた。きっとアンナはこう思っているであろう…うなされる前はあんなにも素直でお優しかったお嬢様が、どうしてこんなにもいう事を聞かないわがまま娘に変貌を遂げてしまったのだろうか。と…ごめんなさい。愛しのアンナ。貴女の事は大好きよ、でも王子に嫌われるなら私は嫌な女の子を演じなければいけないの。
「畏まりました、レオンハルト王子にはそうお伝え致します」
「ありがとう。お願いね?」
絶対寝室には来ないと思い、さっさと帰りやがれ絶倫王子!と内心汚い言葉で罵る美しい悪役令嬢の幼女である私。可愛らしい熊のぬいぐるみを抱き抱えて、絶対来るはずのない男を待ち構える。そろそろアンナが来るだろう、そうドアが開いてアンナの顔を見た………ちょっと待て。後ろにいるイケメンは誰でなく、レオンハルト本人ではないのか。ちょっと待て。その白薔薇の大きな花束は一体なんだ。ちょっと待て。レオンハルトは私の前で跪いて当たり前のように私の手の甲にキスしたぞ。ちょっと待て。止めて、お願い、言うな、とても嫌な予感がするーー。
「貴女に一目惚れをしました、私の婚約者になって頂きたい」
「ひぇ…」
私の人生、早々詰んだかも知れません。