ロリコン王子(絶倫)をドMに覚醒させようとする悪役令嬢の話
第6章 王子(仮)に攫われた先は、攻略者の一人でした6
しかし淑女から紳士に話し掛ける事は無礼に当たる為、モジモジと頬を赤く染めていた。王子から話し掛けて欲しいが為にゆっくりと近付いてチラチラと見ていたり、わざとらしく咳き込んで見たりと何とかして気付いて貰いたくて色々試している女性に遠くから見ていた私は中々面白かったりした。誰かを探してキョロキョロさせている王子に「げっ…」とつい言葉を漏らしてしまう。逃げなければ、そうジュースを飲み干すと使用人に手渡してダンスホールを出てバルコニーに逃げ込んだ。
「クリスティーナ…なぜ逃げるのです?」
「な、なんで…」
「透視致しました。貴女の香りが鼻を掠めましてね…」
「うっ、うわぁ…うわぁ…うわぁああっ」
「冗談ですよ、ですからそんなに引かないで下さい。バルコニーから落ちる事はありませんが危ないですし、お体に障りますよ?ーー…さぁ。私の可愛いクリスティーナ。一曲踊って下さいませんか?」
「嫌です、断固拒否します」
「ふふっ…そうですか。ならば私とお話し致しましょう?クリスティーナが好きそうな甘いスイーツも用意致しましたし…」
“私と”をとても強調して伝えて手を伸ばす王子から私は逃げる。王子、完全に不審者である。誘拐犯の手口かよ。と思ったが口には出さなかった。それにしても王子から魔法を使われたら一発で私の負けは確定するのだが、彼は楽しんでいるのか魔法を一向に使って来ない。と言っても元々運動神経もいい彼だから捕まるのは時間の問題であった。
「かくれんぼの次は鬼ごっこですか…捕まえたら、今度は逃がしませんよ?」
背中から感じられたゾワゾワとした視線と王子の恐ろしい言葉が聞こえた気がしたが、今後ろを振り返ったら絶対後悔すると思い振り返らず走り去って行った。