第3章 初めまして、のその前に
「ことはには、学園のお手伝いとして此処に滞在してもらう!」
「……決まり、なんですか?」
学園長先生のお言葉に、嫌な予感が的中したことを悟り
なんとか絞り出た言葉は、拒否の意を示そうとするものであるが、果たして学園長先生に伝わっているのか…。
「ワシが思いついたんじゃ、決まりに決まっておる!」
「……横暴な」
学園長先生の口ぶりに拒否権がないということがよーく分かり、返事に呆れを含んでしまったのは仕方ないと思う。
背後ではちゃあくんと思わしき人の視線が背中に突き刺さり、気まずくなったが…。
「ことはの面倒はしばらく五年ろ組の鉢屋三郎に任せる!
寝泊りする部屋は、五年長屋の空き部屋とし、何か困ったことがあれば、必ず三郎に頼るように!!」
学園長先生の説明を聞き、五年長屋で寝泊りすることを何とか理解し、名前を呼ばれたであろう後ろに座っている彼を振り返る。
「……はちゃあくん?」
「は・ち・やです。植木鉢の鉢に、屋台の屋です」
僅かに聞き取れた名前を口に出してみれば、案の定違ったようで、一字一句区切られ、漢字についても説明された。
名前を聞き取れなかった私が悪いのだろうけど、一瞬で近づいて来るほどかぁ…。
「は、鉢屋くん?」
「えぇ、学園長先生直々の命である以上、貴方のお世話は私がします。
くれぐれも、ドジをしないでくださいね」
罪悪感があり、今度はしっかりと名前を呼ぶと
鉢屋くんは一つ頷き、迷惑を掛けるなと釘を刺されてしまった。
先ほど新野先生に言った、ドジということを考慮しての発言であろうが……。
「善処、します…。」
「……」
ドジをしないということを保証できず、善処することは伝えておく。
鉢屋くんは口には出さないが、目が語っている絶対するなよ?と…。
目は口ほどに物を言うって、このことか、と軽く現実逃避をしても悪くない、はず
ドジをしたくてしてるわけではないんだけどなぁ……。