第1章 プロローグ
その日は少し友達と話し過ぎて、外はすっかり暗くなっていた。最終下校時刻が迫っていることに気づいて、慌てて友達と学校を飛び出した。
今日は話過ぎたね、なんて笑い合いながら、最寄りのバス停まで歩いて行き、それぞれのバス停の前で解散していく。
「ことは、また明日ね~」
「ん、またねぇ」
またねと、明日も当然に来るかのように挨拶をして
琴音がバスに乗り込んだことを確認して、一歩進んだ。
それだけ、なんてことのない日常の一コマ。
それなのに、今私の目の前に広がるのは見たことのない敷地。
前後左右と念入りに周囲を確認するも、先ほどまであったはずの電柱やバス停、夜道を照らしていた街頭すら見えない。
足元を照らすのは、頭上で瞬く星と雲の間から顔を出す月の明かりのみ。
よくよく足元を見てみれば、地面は土であり
歩き慣れたコンクリートは周囲には一切見当たらない。
「此処、どこ…?」
あまりにも急な事態に、口から洩れた言葉はあまりにも弱々しい声で自分の声であるのかと驚く。
けれどその声は誰かの耳に届くことなく、暗闇に消えていくだけであった。
混乱が飲み込めない状況に、目の前がグラグラと揺れるような感覚に陥る。
それほど、この状況について行けないのだと、どこか冷静な頭で思う。
同時に直前の記憶を必死にかき集めようと、先ほどまでの記憶を思い出す。
けれど、何度考えようと、琴音を見送り歩き出したということだけで、なぜこの場に居るのかは全く見当がつかない。
気付いたら知らない場所
(此処は、どこ…?)