第14章 転入試験
「たっ、大変…申し訳ございませんでした……」
「いや、私の方こそすまなかったね。会場のことは気にしなくて良い!ほんの数百万だ!」
「すっ…!」
「全く!あんたはすぐ生徒を試すようなことをして!」
あの後、崩れるガラスに気を取られた敵…もとい、オールマイトの隙を付いて女の子を救出し場外に飛んだ。
結果的に誰にも怪我は無かったが、雄英高校のグラウンドを一つ使用不能にしてしまった代償は、おいくらか。
保健室でリカバリーガールに擦り傷を治癒して貰っていた頃、オールマイトとイレイザーヘッドが来て事の事情を知ったのだ。
「だから俺は反対だって言ったんですよ。」
「でっでも結果的に良い感じになったジャン!?」
本物のオールマイトを目の前に、ちょっと緊張する。けれどわたしは数百万の代償と転入試験の落第でそれどころではなかった。いやまだ落第と決まったわけではないけど。
「あ、あの」
「ああ、君合格ね」
「えっ」
ガラスのドーム代、いくらですか。
意を決してそう聞こうとした思想と声は、オールマイトのあまりにも淡々とした一言に全部吹っ飛ばされた。
さっきまで痛かった傷の痛みも、リカバリーガールの治癒による身体の怠さも全部、その時は忘れてしまうくらい、頭の中に浮かんだ文字は「?」の一点張り。
「だから、合格。夏休み明けから君ウチの生徒。あっ、てか来週の林間合宿一緒に行く?私は行けないんだけどね」
「えっちょっと待っ、」
「本来なら厳正な審査の後家に通知が行くんだが、校長がもう合格で良いってな。おまえの最後の言葉にえらく感心してた。」
「最後の…」
ヒーローになりたいから誰かを助けるんじゃない。誰かを助けたいから、ヒーローになりたいんだ。
「そんな訳だ。手続きの書類やらなんやら色々あるが、まずは合格おめでとう。」
「あっ、ありがとう、ございます……?」
実感が湧かない。
雄英高校ヒーロー科。
ずっと夢見てた、憧れの舞台。
「……ありがとう、ございます…」
勿論雄英に入ったから終わりじゃない。所詮雄英に入ったことなんて、将来ヒーローになる時に履歴書に書ける程度。これで、わたしの人生が決まったわけじゃない。
「ようこそ、雄英高校ヒーロー科へ。」
それでもこれは、わたしの夢に向かう為の大きな第一歩だ。