第14章 転入試験
「轟くん、ここだよ……ってあれ、麗日さん、どうしたの?」
「でっデクくん大変…!会場に敵が…!」
「せっ先生!早く助けに行かなければ!何故動かないのです!?」
顔を真っ青にしてモニターを指さす麗日と、相澤先生に向かって焦りと怒りを乗せた言葉を投げかける飯田を見れば、何が起きているのか、察しはついた。
監視室のモニターに映し出されたのは、大柄の男とそれに囚われた他校の女子生徒、それと、ぼろぼろになった蒼井だった。
警報なんか鳴ってなかった。思い出すのはUSJの時の、敵連合。
「…ッ」
「と、轟くん待って!」
緑谷はすぐさま踵を返して試験会場に向かおうとする俺の腕を掴んで静止させた。
「あの敵、よく見て轟くん。それにみんなも。」
「…流石はオールマイトオタク、ってか。心配要らねえから大人しくしてろ。試験中だ。」
相澤先生が小さくため息をついてモニターを眺めている。心配要らねぇって、何だ。
緑谷の方へ向き直り、画面に映る男をじっと眺めていると、ふと前の救助訓練のことを思い出した。まさか。
「オールマイト…」
「えっ!ちょっまたぁ!?」
「もうしないって言ったのにオールマイト…!」
敵じゃ、なかったのか。
腹のあたりに沸いた焦りと冷や汗が引くのを感じる。
つまる話が、オールマイトが敵に扮して受験生を試しているのだ。相澤先生曰く、オールマイトはこういうのが好きらしい。とことん悪趣味。
ふと、相澤先生の顔色が変わる。
「…ッな、マジか!?」
再度モニターに目を移すと、ドーム状に覆われたガラスががらがらと音を立てて崩れていく。ガラスの破片が光を反射してきらきらと光っている。
「これ、あいつがやったのか…?」
「い、いや…やりすぎっつか、むちゃくちゃしすぎだろ……」
他の奴らもぽかんと口を開いたままモニターに映し出される光景から目が離せないでいた。勿論、俺も。
赤く充血した目を丸く開いていた相澤先生が、がくりと項垂れた。
「……合否はともかく、お前らとは最高に気が合いそうだな。」