第14章 転入試験
「…ッは、も、敵湧きすぎ…!」
仮想敵が破壊した建物の瓦礫を敵の体内へ瞬間移動させる。あれだって立派な精密機械。中に異物が混入すれば導線が切れ動かなくなり、爆発する。
45体目の仮想敵を破壊したところで、がくりとその場に膝を付く。
入試の時とは打って変わり、何処からか仮想敵がどんどん湧いて出てくる。こんなの全部処理しきれるはずがない。
「…あつい、」
自らの額に手を当てる。熱い。
【瞬間移動】は、空間をよく把握してから初めて発動可能となる個性だ。座標軸や位置、空気の密度など、瞬間移動の発動には次元と空間の高い演算能力が必要となる。
これはお母さんに聞いた話だけど、わたしはそれを無意識レベルで処理しているらしい。なので、脳機能への負担が大きい、と。
個性を使いすぎると、脳機能がオーバーヒートを起こして知恵熱が出る。これはここ数年で知ったこと。
「…だからって、止まってるわけにはいかない。」
頭がズキズキと痛む。
それでも前に進む為、壁に手をついて必死に立ち上がる。
あの、女の子は。今どうしてるだろうか。
『私ね、轟焦凍の婚約者。だからもうあいつに近づかないでくれる?』
思い出す度に胸が痛くなる。今はそれどころじゃないとわかっていても、思考が言うことを聞かない。
婚約者って何?轟くんは、将来を誓った相手がいるのに、わたしに、あんなことをしたのか。じゃああれは、あのキスは、一体何?
無かったことにしてと言ったのはわたし。今更、わたしが何を聞けると言うのだろうか。
家から持ってきた冷えぴたをポケットから取り出し、自分の額に貼る。もうぬるくなってしまっていたが、それでもわたしの体温よりは冷たく感じる。
もう少し、頑張ろう。頑張って、それで、轟くんに、
なにを、話そう。
___ッドカン !!