第14章 転入試験
「……」
入学して4ヶ月。通い慣れた道を登校した。
今は夏休み。学校に人の気配は殆ど無い。それでも、俺がここに来た理由。
「あ、轟くん!」
「…緑谷。」
廊下で緑谷に出くわす。屋上から試験会場の様子を伺おうと思っていたのだが、どうやら緑谷達は先に来ていて、先生達の元で一緒に試験を見学しているらしい。皆、考えることは同じなんだな。
「轟くんも心配だったの?」
「…心配、っつか、」
心配半分、なんとなく半分、と言ったところだ。今朝、起きてから休みだというのに妙に落ち着かない気持ちで、学校も無いのに制服を着てここまで来てしまったのは、つまりそういうことなのだと、思う。
「今ね、丁度実技試験始まったところなんだ。入試の時よりはちょっと優しいみたい」
「…そうか。」
緑谷の後ろをついていく。相変わらず緑谷は蒼井の個性が気になるようで、ブツブツと何かを唱えながら歩いていた。
…俺も、頑張れの一言くらいメールで送ってやればよかっただろうか。そんなことを考えながら、嫌という程晴れた空を窓越しに見上げる。
あれから、蒼井とは連絡を取っていない。下手なことを言って、あいつのデリケートな部分に触れたくなかった。
(……なんて)
…本当は、嫌われたくなかっただけかもしんねぇけど。
あの夜から、決意に満ちた瞳が脳裏にこびり付いて離れない。強くなりたいと願うあいつの意思を、俺はずっと邪魔してたのかもしれない。
「…守りてぇモン全部、か」
俺の守りたいものって、何だ。