第14章 転入試験
「ほぁ……綺麗……」
転入試験当日。
雄英高校の門の前に立つ。さすが日本屈指の名門校、どこもかしこも未来的でかっこいい。
夏休み中だからか、校舎に人の気配は無い。ふと、スマホを見ると短期合宿の時、連絡先を交換した麗日さんと梅雨ちゃん、それに百さんから「試験がんばれ」という旨のメッセージが届いていた。
頬を綻ばせながら、お礼のメッセージを送り返す。
あれから、轟くんとは連絡を取ってない。轟くんからは一切何の連絡も無く、わたしはわたしでなんとなく気まずくて、何も送れずにいたのだ。
ああだめだ、これから試験なのに、こんな事で心を迷わせてる暇なんてない。
轟くんのことは心の奥に仕舞い、スマホをポケットに仕舞う。
最初は筆記。試験会場の教室に付く。
わたしの身長の何倍もあるドアを開けて教室に入ると、わたしの他に2人、受験生が居るようだった。
(転入候補者、わたしだけじゃなかったんだ。)
1人は他校の制服の女の子、もう1人は雄英の生徒の男の子だ。他の科からの編入希望だろうか。
自分の名前が書いてある机に腰掛け、試験開始時間までぱらぱらと教科書をめくる。
ふと、教科書の余白に書かれた見慣れない文字に目が行った。
“ がんばれ。”
すぐ、理解出来た。
これ、轟くんの字だ。
ばっと教科書に顔を隠し、浮かんだ涙が零れないように必死に堪える。
がんばる、がんばるよ、わたし。
守ろうとしてくれていた轟くんの手を、わたしは離してしまった。
でもね、わたしもう、守られてるだけじゃ嫌なんだ。
轟くん。
この試験が終わったら、会いたいな。
ちゃんと話をしよう。それで、この試験に受かったら、わたしの気持ち、全部。