第13章 決意表明。
「……」
「……」
痛いくらいの沈黙。
握られた手首はそのままに、ただただ時間だけが過ぎていく。
どうしよう、こんなはずじゃなかったのに。わたしはただ、轟くんと花火見て、きれいだねって言い合って。ただ、それだけだったのに。
「…あの、わたし、強くなる、から。」
「…は?」
「もう、お母さんにも轟くんにも心配させないくらい、強くなるから。1人でも、生きていけるように__…!」
決意表明のつもりだった。わたしが弱いからお母さんも轟くんも心配する。わたしが強くなれば、もう誰も傷つかないと思った。
けれど、違ったのだろうか。提灯のあかりに照らされた轟くんの表情は、今まで見たことないくらい動揺の色を浮かべていた。
「…違う、ンなこと言ってんじゃねぇ。俺は……__!」
頬に伝う暖かい雫。ああ、やだ。なんでわたしが泣いてるんだろう。わたしが悪いのに、都合が悪くなるとこの目はすぐに大粒の涙を零す。これもわたしが、わたしを嫌うひとつの由縁だ。
お父さんみたいなヒーローになりたくて強くなろうと誓った。
でも理想は理想のままで、現実のわたしはいつも誰かに守られて、弱いまま。そんな自分が、情けなくて、嫌いだった。
「…悪い。」
轟くんはそう言ってわたしの手首を離す。それ以上、轟くんが口を開くことはなくて、わたしも何も言えなかった。
いつの間にか打ち上がってた花火。
心臓に響く大きな音。
「…わたし、」
薄々感づいていた。
でも、心のどこかで常に誰かに背負われて生きていたい自分がいた。だから、気付かないふりをしていた。
でも、もうそれじゃだめなんだ。
「もう、轟くんに頼らない。」
花火の光が、轟くんの左側を照らす。花火の音に混じったわたしの声は、彼にちゃんと届いていたようで。
轟くんは動揺の色を孕んだ瞳を揺らした後、「そうか」と呟いた。
これでいい。わたしは、強くならなきゃいけないんだ。