第13章 決意表明。
「…ったくあいつ、どこ行ったんだ。」
少し目を離した隙に蒼井が消えた。いや、正直俺にも落ち度がある。この人混みの上に蒼井なのだ。命綱でもないとすぐはぐれてしまうことは明確だったはず。
何かで繋いでおくべきだったな。人混みから離れ、スマホを開くが圏外。これだから人の多いところはあまり好きじゃない。
一応周りを見渡すが勿論蒼井は居ない。こんな人混みの中でヴィランに襲われたなんてことはないと思うが、迷子になってぴーぴー泣いてる蒼井の姿を想像して少し焦る。
「…蒼井、」
ふと、目線を上にあげると歩道橋の上に蒼井の姿を見つけた。
一緒にいるのは上鳴だ。
笑ってる。あいつの、あんな楽しそうな顔、見たことあっただろうか。
俺に、そんな風に笑いかけたこと、あっただろうか。
心配で曇っていた心はどんどん黒く濁っていく。
とりあえず歩道橋に登るが、蒼井はこちらに気付いていない。
なんだ、あいつ、俺が居なくても平気なのか。
別に必要とされていたわけじゃない。あいつの用心棒してたのも、俺が勝手にあいつのこと心配してただけで。それが、もしかしたらあいつにとっては迷惑なことだったのかもしれない。
胸が苦しい。息がしづらい。人混みに、酔ったのだろうか。