第13章 決意表明。
「轟いた?」
「わかんない…見えない…」
歩道橋に登り、屋台に群がる人混みに轟くんを探す。と言っても、人が多すぎて全然見えない。
このままじゃ花火始まっちゃうな。スマホで時間を確認しつつそんなことを思っていると、不意に上鳴くんが口を開く。
「それ、ちょー可愛いじゃん。轟のためにお洒落したの?」
「ッそ!そんなんじゃ…!」
そんなんじゃある。浴衣までは行かなくても、気合い入りすぎず、ラフ過ぎずと微妙な塩梅で選んだおろしたてのワンピースだ。
轟くんは何も触れてくれなかったけれど、上鳴くんの言葉には正直心が浮いた。やはりかわいい、と言われて嬉しくない女の子は居ない。
「そういえば、上鳴くんは1人で来たの?」
「そんなわけないだろ。峰田と来てたんだけどあいつ小さいからすぐ見失うんだよな。」
「え!探してあげなくて大丈夫…?」
「平気平気!あいつのことだもんきっと今頃女の子の尻に引っ付いてんだろ。」
なにそれ、と自然に笑いが零れる。相変わらず目は轟くんを探していたが、上鳴くんと居ると変に気負わず楽でいられる自分がいる。昨晩からドキドキしてばっかりだったからな。
でもやっぱり、花火は轟くんと見たかった。他の誰でもない、轟くんと。
花火まであと15分程。轟くん、どこにいるんだろう。