第13章 決意表明。
「…っうわ、人すごいね。」
「そうだな。」
暗くなり始めた夕方頃、わたし達はお祭りに赴いた。
周りの浴衣を着た女の子たちを見て、やっぱり浴衣で来れば良かったかな、なんてちょっと後悔した。
轟くんだって普通の格好なんだし、わたしだけ気合い入れるのも恥ずかしいなと思って、最近買った膝丈のワンピースを着てきたのだ。これはこれでお気に入りだし、別にいいんだけど。
「行くか。」
「う、うん。」
人混みをかき分けて轟くんに付いていく。
わたあめ、焼きそば、たこやき。色んなものに目が行く。夏は暑いし虫が出るし汗かくし、あんまり好きじゃないけれど、夏祭りのこの雰囲気は大好きだ。
「お嬢さん、ひとり?俺らと回んない?奢るよ!」
「えっ、ひとりじゃな…あれ。」
不意に知らない人に声を掛けられる。俗に言うナンパというやつだろうか、初めてされてしまった。
男に言われて周りを見渡すが轟くんは見当たらない。はぐれてしまったのだろうか、早くない?まだ来て五分しか経ってないですけど…!
「お友達とはぐれちゃったの?俺らも一緒に探してあげよっか。とりまお腹すいてない?」
「そこの焼きそば、俺の友達がやってんだけど、すげーうまいから!」
「あ、あの、」
この人たちからは悪意は感じない。感じないからこそ、強く言えなくてタチが悪い。男は強引にわたしの手首を掴んで引いていこうとする。
一昨日の、あの男のことを思い出してしまった。不安が、恐怖が、蘇る。
「…っや、やだ…!」
助けて、轟くん……!