第1章 わたしだって、ヒーローに。
「…あの、ごめんなさい、わたしのせいでこんな時間まで…」
結局帰路に就いたのは夜も更け、月が夜空を照らす頃。
わたしのせいで大事になったのではという自責の念で胸が痛む。わたしが行かなければ、赤白少年一人でなんとかできたのではないかと、あの強力な個性を目の前にしては思わずにいられない。
「…?別にお前のせいじゃねえ。つうかむしろ俺の方が怒られた、やりすぎだって。」
「それは…そりゃ、目立つ個性、だしねぇ」
苦笑をこぼしながら赤白少年の3歩後ろを歩く。月がきれいだ。
…ああ、明日学校行きたくないな。きっと先生に怒られるんだろうなあ。最悪除籍とか…ッう、胃が痛い。
「どうした」
「へっ?」
「顔色、悪い」
いつの間にか2歩ほど縮んだ距離に、どきりと鼓動が跳ねる。よく見たらめっちゃイケメンだこの人…。
「だっ、大丈夫!です、…明日、先生に怒られるんだろうなあ、と…」
「ああ、」
さすが、雄英に推薦で入った人だ。そんなことか、とでも聞こえてきそうなくらい動じない表情に、すこし憧れる。…ちなみに推薦入学の件は警察の人と話してるのを盗み聞きしただけ。
「…あ、」
気付けばもう家の近くまで歩いてきていた。この人も家、この辺なのかな。
あの、と声を掛ければ歩みを止め振り返る。綺麗に2色に分かれた髪が月明りに溶けていて、綺麗だと思った。
「わたし家…、こっち、なので」
「近いのか」
「う、うん。すぐそこ。」
そうか、と一言いうと赤白少年はくるりと進行方向を変えこれまで歩いてきた道を引き返して行った。
「も、もしかして… 送って、くれたのかな」