第11章 都市伝説
個性が欲しい。
それを聞いて俺が思い出したことは、昨日の蒼井の母親から聞いた話だった。
『個性を奪い、個性を人に与えることの出来る個性を持ったヴィランが居るらしいのよ。』
ンなふざけた話、あるわけがねえ。あるわけねえと思っていても、目の前の男の必死さにことの異様さを感じ取る。
俺の制服の袖をぎゅっと握る蒼井を見ると心底心配そうな眼差しを向けられる。
情けねえ。ヒーローってのは、人の安心を守るもんだろが。こいつにこんな顔させるなんて、俺もまだまだってことだ。
「何言ってんのかわかんねぇけど、こいつに手ェ出すなら容赦しねぇ。」
「…!」
こんなやつ、個性なんか使わなくても捕獲できる。所詮は都市伝説に狂わされたチンピラだ。
俺は男の手首を掴んで後ろへ捻る。落としたナイフを蹴って男を地面に押さえつけた。
「蒼井、警察。」
「うっ、うん…!」
警察を待っている間、男はずっとうわ言のように「ころしてやる」と呟いていた。