第11章 都市伝説
「わたし、雄英に行きたい、です。」
「そうか。じゃあ転入届け渡すから、色々記入して持ってきて。」
「えっ、あ、はい!」
次の日の朝。学校に着くや否や職員室に飛び込み、先生に雄英に行きたい旨を伝えると、昨日の今日だと言うのになんともあっさりとした事務的な答えが返ってきた。もっとなんかこう、担任の感動的な話…とか、ないのだろうか。
渡された転入届けをぎゅっと握り締め頭を下げる。
「わかってたよ。お前、めっちゃ行きたいって顔してたし。」
「そ、そうすか……」
「無茶すんなよ。なんか困り事があってら遠慮なく言え。雄英の教師陣より優れたアドバイスができるかはわからないが、どこの学校に行ったってお前は俺の生徒なんだからな。」
ぽんぽんと優しくわたしの頭を撫でる担任の姿にうっかり目頭が熱くなる。ここでの4ヶ月間は、雄英に行きたかったという悔しさも忘れてしまうくらい、楽しいものだった。けれど、今わたしの目の前にはチャンスが転がっている。それを無下にすることこそ、色んな人に失礼だ。
「ありがと、先生」
「ただし夏休みの宿題はちゃんと提出しに来ること。」
「う゛っ、」
がんばれ、と笑う先生に手を振って、次は春香の元に向かう。雄英に落ちたわたしを追いかけてここまで来てくれた春香。きっと春香ならわかってくれると思ってるけれど、背徳感と罪悪感が胸を締め付ける。
春香はわたしの幼なじみで、1番の親友だ。幼い頃からわたしを守り、手を差し伸べ引っ張っていってくれた。ごめんね、じゃなくて、ありがとう。それを胸に彼女の元へ駆ける。