第10章 オリジン
「わたしね、3年前にお父さん、死んじゃったの。ヴィランに襲われたわたしを助ける為に、命を懸けてくれた。」
「……」
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わたしのお父さんはプロヒーローだった。といっても、極無名の地方ヒーローで、決して強くはなかったけれど。
でも、わたしが生まれてからはヒーロー活動を辞め、母の収入で我が家は成り立っていた。
近所の子供たちには「逃げ腰ヒーロー」だのと馬鹿にされ続け、わたしはわたしで父のことで軽い虐めにあったりもしてた。
そりゃそうだ。父はヒーロー活動中、ヴィランに襲われた仲間を置いて1人で逃げ帰ってきたのだという。地元ではそれはちょっとした話題になり、わたしはそんな情けないお父さんが次第に嫌いになっていった。
『ねえ、どうしてヒーローやらないの?お母さんにばっかり働かせて、ずっと家にいて、恥ずかしいよ。わたしもう学校行けない…!』
3年前、中学1年生だったわたしは反抗期真っ最中で、学校でも度々弄られ恥ずかしい思いをしていた。そんなストレスが溜まりに溜まって、ついにお父さんにぶつけてしまったんだ。
泣きじゃくるわたしをお父さんは優しく宥め、
『わかった。ごめんな、辛い思いさせて。じゃあ今夜、とびきり活躍して帰って来よう。もう二度と、お前のこと馬鹿にさせないためにな。』
と言って、昔所属していたヒーロー事務所に話をつけ、一晩限定でお父さんはヒーローとして復活した。
『それじゃあ、行ってくる。』
『……うん。』
あの時、やっぱり行かなくていいよって言えばよかった。学校で友達になんて言われたって我慢しておけばよかった。近所の子供たちに、うちのお父さんに勝てんのかって怒鳴り散らしておけばよかった。
お父さんが死んだのは、全部私のせいだ。わたしが、……お父さんを、殺してしまったんだ。