第8章 日常
「…な、何……」
「……悪い、つい。」
「ついって何…!?」
びっくりしたなんて騒ぎじゃない。
一周回って逆に冷静だ、今。
轟くんに散々頭を撫で回されたと思えば、急に小難しい表情をして、わたしに、キスをした。
一周回って冷静?そんなことあるわけない、ドキドキしてどうにかなりそうだ。どうしてキスしたの?ついって何?心に浮かぶ疑問は口に出ることなく消えていく。
「嫌だったか、」
「い、嫌とかそういう話じゃ…!」
轟くんが何を考えているのかわからない。遊ばれてる?実は轟くんってそういう人?いやそんなわけ…ない、はず。ハッ、実は帰国子女?キスは挨拶替わり…!?
「…悪い。」
そう言ってもう1度優しく髪を撫でられる。
轟くんはそれ以上何も言わなかったから、わたしも何も聞けなかった。
わたしに触れる轟くんの手はいつも優しくて、温かい。