第1章 わたしだって、ヒーローに。
「若い芽を摘んじまうのは残念だけどよお…恨むなら自分の勇気を恨むんだな。」
突き刺す様に突っ込んでくるナイフを咄嗟にしゃがんでかわし、大男に抱かれた男の子に手を伸ばす。
触れてしまえば、わたしの勝ちだ。
「…ッな、こいつ…!」
大男はポケットからナイフを取り出し、細身の男もわたしを追ってナイフを振り下ろす。
…けど、わたしの勝ち。
男の子に触れ、ワープで距離を取る。
大男の手から離れた男の子を抱えて床に転げる。怪我はない、気を失っているだけだ。
「…ックソ、こいつ、ワープ個性かよ!」
「…ッえ、」
細身の男が懐から拳銃を取り出す。
しまった、助け出した後のことまで考えてなかった。…いや、人質がこの男の子だけならワープで外まで飛べた、この赤白少年を置いていくわけにはいかない。どうする、わたし、どうする…!
こういうところがC判定たる所以なのだろうな、と痛感する。けど、わたしが次の行動を起こすより先に、犯人の男が拳銃の引き金を引くより先に、
冷たい冷気がわたしの頬をかすめる。
「…あぶねえから、下がってろ。」
「…ッは、はい、」
「な、なんだこれ!氷…!?」
わたしが瞬きをした一瞬で、細身の男は足から拳銃を持つ手にかけて、氷で覆われ身動きの取れない状況になっていた。
ぱきぱきと氷が周りの空間を埋めていく。あっという間に二人のヴィランを捕えてしまった。
男の子を抱きぽかんとしているわたしに、大丈夫かと手を差し伸べてくれる赤白少年。どうも…と小さく零し、出された手を取るも、男の子が重くてうまく立ち上がれない。
そのことに気付くと、赤白少年は男の子を担ぎ上げ、わたしの腕を引いて立たせてくれる。
「…お前、ただの高校生だろ。馬鹿じゃねえのか。」
「かっ、…返す言葉もございません…」
周りの冷気に肩を震わせ、そりゃこんなすごい個性あったら助けなんていらなかったよね…
…わりと、頑張ったんだけどな。
わたしの行為がかえって彼らを危険に晒したことへの反省と無力な自分への自責の念に押し潰されそうになる。
わたし、こんなんで本当に、ヒーローになれるのかな。
「…けど、」