第7章 合宿最終日。
「…蒼井、怪我、ねえか。」
「そんな、わたしより轟くんが、」
轟くんが押さえている個所から血が滲んでいる。
「…平気だ。これくらい、なんともね…ッ蒼井後ろ!」
「えッ…痛…!」
頭皮に激痛が走る。何…。
しまった、脳無は一体だけじゃなかったんだ。一体目のヴィランよりは小柄な脳無に髪の毛を掴まれて身動きが取れない。
「…ックソ、!」
ああどうしよう、これじゃ轟くんが満足に戦えない。
逃げなきゃ。けど…ッ痛い、痛くてテレポートが発動できない。
轟くんが悔しそうにこちらを見ている。
あれ、
わたしは、この光景を見たことがある。
『お父さん!いやだ、いやだ!置いていかないで、いい子にするし、宿題もちゃんとやるから、だからもう…やめて…!』
『あかり…お父さんはな、お前を守るためならなんだってやるさ。いい子じゃなくていい、宿題なんかやらなくたっていい。お前が、元気でいてくれたら、それだけでお父さんは…』
…そうだ。わたしがヒーローになろうと思ったのは、
大事なもの、全部守れる、ヒーローに、
「…ッ、轟くん、」
「ッ蒼井!動くな、絶対助けてやる、」
だめだ、このままじゃあの時と同じだ。
わたしはもう、助けてもらうばかりの子供じゃない。
もう、無力を理由に逃げたくない。
落ちていた鋭利な氷の破片を手に引き寄せる。
「…ッ蒼井、」