第7章 合宿最終日。
ドゴンッ!!!
「蒼井ッ!!」
「…ッ!?」
不意に訪れた爆音と爆風。
それは、爆豪くんがいるであろう森の中ではなく、わたしのすぐ後ろで起きていた。
轟くんに腕を引かれて爆発地から距離を取る。
何だ?これも先生たちの仕組んだ訓練の一環…?
しかし砂煙のなかから現れたのは、先生でも、生徒でもなく、
「…ッひ、なに、あれ…!」
「……!あいつ…ッ」
そこに居たのは、全身筋肉で覆われた、脳が丸出しの、人間…?
人間のものとは思えない眼光がぎょろりとこちらを向く。
まって、あれ、聞いたことがある。
雄英のUSJ襲撃事件。飽きる程ニュースでやっていたので嫌でも知っている。
あのオールマイトと互角にやりあった、脳無と呼ばれる改造人間。こいつが、脳無。
「蒼井!相澤先生にこのこと知らせろ!こいつ、USJの時のヴィランだ!」
「あ、わ、わたし、」
怖い。
怖くて、手が、足が震える。だって、あのオールマイトが苦戦した相手。
わたしの個性の弱点。それは精神面に大きく左右されること。精神面が安定しなければ、瞬間移動は発動しない。
「…ックソ、」
だんッ、と轟くんが大きく右足を地面に打ち付けると、一瞬で大氷壁がヴィランを覆う。
わずかに動きを止められたものの、すぐに氷は打ち砕かれ、ヴィランの目がぎょろぎょろと蠢く。
ヴィランがダッと走り出し轟くんに近づく。
速い…!まずい、このままじゃ轟くんが…!
ヴィランの痛々しいほどに筋肉で膨れ上がった腕が、轟くんの胴を殴る。轟くんはそのまま崖の固い壁に打ち付けられ、苦しそうに咳を吐く。
「…轟くん…!!」
「、大丈夫、だ、…蒼井、あぶねえ、から、逃げろ…!」
「…!」
轟くんが戦っている。わたしが今しなきゃいけないことはわかっている。わかっているのに、恐怖で体が動かない。
成長したなんて、慢心だった。わたしは何も変わってない。
怖い物からは目を背け、苦しいことからは逃げていた。だってわたしは弱いから。弱者にできることなんて、たかが知れている。
わたしが、ヒーローに、なんて。