第7章 合宿最終日。
今日は夕方までの訓練で、夕方になったら学校に帰るんだそうだ。
しんどかったけどあっという間だったなあ。それに、すごく勉強になったし、成長できた3日間だったと思う。
…気になる人も、できたわけですしね。
「今日の訓練は鬼ごっこだ。以上。」
「えええちょっと待てよ相澤先生!?」
「私達遊びに来たわけじゃ…!」
想定外の相澤先生の声に戸惑いの声が溢れる。
鬼ごっこ、なんて、最後にやったのいつだろう。わたしもすっかり大人になってしまったものだ。
…なんてくだらないことを考えている場合じゃない。きっとただの鬼ごっこではないに決まってる。
「遊びじゃねえ。そこらのクソガキの鬼ごっこじゃねんだ。気張れよ。」
今日の訓練はこうだ。
二チームに分かれ、それぞれ鬼を一人決める。相手チームの鬼が誰かはわからないので、鬼を見つけ出し捕まえたチームの勝ち。ちなみに鬼を捕まえられるのは鬼だけ、という特異ルールだ。
ちなみに鬼はくじ引きで決められる。
鬼は自らの身を隠しながら相手の鬼を見つけ出し、捕まえなければならないので重要な役割であると共に、鬼であることがバレればヘイトを集める難しい役割でもある。
正直、鬼にだけはなりたくないと思っていた。だって、相手チームには、爆豪くんがいるのだ。下手をすれば殺されそう。
…それでも、運命というのは残酷なもので。
「……」
「あかりちゃんが鬼ね。大丈夫よ。私達が守ってあげるわ。」
「梅雨ちゃん…」
「うんうん!みんなであかりちゃんを守ったろ!」
「麗日さん…!」
わたしの手に握られた赤い印のついたくじ。
いつもそうだ。わたしは昔から貧乏くじを引きがち。
昔はそんな自分が嫌だった。でも今は、これもヒーローになるための試練なら。
「ありがとう、わたし、頑張るね…!」
固い意思を握るようにぐ、と拳を握る。
我ながら、この合宿中にかなり成長できてると思う。轟くんに貰ったキーホルダーを心の中で思い浮かべる。訓練中に失くしてはいけないと、置いてきてしまったけど。