第5章 瞬間移動【テレポート】
「…あの、これももらっていい?」
わたしは百さんの造りだした鉄の棒を拾い上げる。
「そんなん拾ってどうすんだ」
「武器。いざというときには、これでばこんッ、と」
そうだ、攻撃手段がないわたしは、これくらい持っておかないと。
せめて自分の身くらいは、自分で守れるように。
「…あぶねえからあんま振り回すな。」
「はぁい…ねぇ。これ…大きい金属反応が、近づいてきてない?」
八百万さんに貰った金属探知機を見ると、大きな金属反応が正面から近づいてくる。
ちょっとまって、これってもしかして…。
「…!機械人形だ!」
木々の間から大きな巨人型のロボットが顔を出す。
「とりあえずこっから離れるぞ!八百万たちを巻き込むわけにはいかねえ。」
「う、うん!」
八百万さんたちからかなり距離は取った。ここなら轟くんの氷壁で動きを止められる。
「…ッ!」
轟くんの右足から機械めがけて氷の柱が連なっていく。
しかし、機械は大きく跳躍し氷を避けた。
うっそ、機械ってあんなに飛べるもんなの…!?
轟くんが左側の炎で追撃するが、あまり効いていないようだった。
「…、相澤先生の仕業だな。俺たちの個性に合わせて、わざと相性の悪いヴィランを用意してる。」
「それって、どういう…?」
「俺の氷は、横の距離は伸ばせても縦の距離には限界がある。あんなに高く飛ばれたら、捕えられない。あとあれ、炎耐性の素材でも使ってんだろ。」
「そんな…!」
「…けど、必ず突破口はある。これまでもそうだったし、相澤先生はそういう人だ。
「突破口…」
機械人形がわたし達の前に立ちはだかる。
轟くんの攻撃は効かない。ということは、わたしの個性が突破口の鍵、と考えるのが妥当。
どうする、わたしには今、何ができる?
轟くんを連れて逃げる?ううん、わたし達はもうこの機会にタゲを取られてる。まだネズミも見つけてない現状、時間いっぱいこいつから逃げることを考えるのは愚策。
考えろ、わたし、もっと、何かあるはず。